人気ブログランキング | 話題のタグを見る

街角の歌 ――黒瀬珂瀾――

5月2日

ふわふわの耳を重ねてねむる猫<空室アリ>の輝く街に  東 直子

 アパートかマンションか、それとも貸し店舗か。<空室アリ>の看板が新しい入居者を待ち構える横で、猫はあくびをして眠りにつく。住人がころころと入れ替わる様子にも、まるでワレ関セズといった具合だ。重ねて閉ざされた耳が、人間への無関心を表しているようにも思える。でも、もしかしたら、何も無いということに我慢しきれず、部屋に何かを詰め込もうと焦る私たちこそが、この猫のふわふわの眠りを欲しているのではないだろうか。  (『青卵』平成13年刊)

以上、抜粋。

■『街角の歌 365日短歌入門シリーズ』 2008年4月1日初版発行 ふらんす堂
by takeuma333 | 2009-06-19 18:00 | Tanka


<< 砂の砦 ――浦川聡子―― 真っ白 ――谷郁雄―― >>